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肺動脈肥厚におけるNOX1/NADPH oxidaseの役割

NOX1欠損マウスでは肺動脈が肥厚

NOX1欠損マウスをもちいた開胸実験を行っていたところ,右心室が突出していることに気付きました。

そこで組織学的検討を行い,NOX1欠損マウスでは右心室が拡大していることを見出しました。

組織学的検討や心エコーを用いた検討から,NOX1欠損マウスでは左心室の異常が認められませんでしたが,右心室が著明に拡張していました。

このことから右心室の後負荷が,つまり肺血管抵抗が亢進しているのではないかと考えました。

そこで肺組織をビクトリアブルーにより,弾性線維(血管平滑筋層)を染色したところ、NOX1欠損マウスでは肺動脈が肥厚していることが明らかとなりました。

NOX1欠損マウスでは肺動脈平滑筋細胞のアポトーシスが抑制

血管平滑筋層が肥厚していることから,NOX1は肺動脈平滑筋細胞(PASMC)のターンオーバー(増殖もしくは細胞死)を調節していると考えられました。

そこでマウスPASMCを初代培養し,フローサイトメータとTUNEL染色により細胞のアポトーシスを検討したところ,NOX1欠損マウス由来のPASMCではアポトーシスが減少していることが明らかとなりました。

PASMCの増殖亢進およびアポトーシスの抑制は肺動脈の肥厚を引き起こし,肺動脈性肺高血圧症の原因となることが知られています。

肺動脈性肺高血圧症ではPASMCの電位依存性カリウムチャネルKv1.5の発現減少によりアポトーシスが抑制されることが報告されています。

そこで,NOX1欠損マウスのPASMCにおけるKv1.5タンパクの発現を検討したところ,有意な発現減少が認められました。

Kv1.5がPASMCのアポトーシスに関与しているか確認するために,野生型マウス由来PASMCのKv1.5を異なる3種のsiRNAをもちいてノックダウンしたところ,何れもアポトーシスの抑制が認められました。

一方でNOX1欠損マウス由来PASMCではKv1.5のノックダウンによりアポトーシスに影響が認められませんでした。

NOX1は肺動脈平滑筋細胞の恒常性を維持し,肺動脈の肥厚を抑制

以上の結果からPASMCにおいてNOX1はKv1.5の発現調節を介しアポトーシスを誘導し肺動脈の恒常性を維持し,肺動脈の肥厚を抑制していることが明らかとなりました。

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